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よく質問をいただくので、精神科で使うお薬について説明を行います。

 

 

 

 

 

精神科で使用する薬剤は基本的に、向精神薬という分類に入ります。中枢神経系に作用し、精神機能に影響を及ぼす薬剤であるからです。

向精神薬には、治療薬だけでなく覚醒剤などの精神異常を来すものも含まれますが、ここでは主に治療薬としての向精神薬について述べていきます。

 

 

全ての薬剤を掲載するのは途方もない行為なので、比較的よく使われる・使う薬剤をメインに取り扱うこととします。なお、わかりやすさを重視し薬の名前を代表的な商品名で記載し、かっこ書きでジェネリックなどに使用される一般名を記載します。商品名(一般名)の記載順です。

​新薬なども続々と開発されているので、気づいた時に更新していきます。

 

 

1、抗精神病薬(メジャー・トランキライザー)

 

 

精神病症状に対する治療薬。脳内神経伝達物質(主にドーパミン)の拮抗作用があり、主に統合失調症に使用されます。

薬剤によっては気分障害(うつ病や双極性感情障害)に適応があり使用されることも多く、発達障害にも一部使用されます。

また、適応外使用ながらせん妄や認知症の周辺症状の緩和、精神運動興奮状態や幻覚妄想状態に使用することもあります。児童精神科の分野ではチックに対する治療に使われることもあります。

 

 

①非定型抗精神病薬

 

比較的最近開発された薬。第二世代抗精神病薬ともいいます。定型抗精神病薬の副作用軽減を目的とし開発されました。剤形も豊富で錠剤・液体・注射剤などがあるため、処方されることが多いです。

なかには2週間や4週間に1度、筋肉内注射を行うだけでその間内服せずとも効果が持続する持効性注射製剤(LAI)もあり、治療の選択肢が広がっています。

 

 

 ⅰ)SDA  ・・リスパダール(リスペリドン)、リスパダールコンスタ(リスペリドンLAI)、ルーラン(ペロスピロン)、インヴェガ(パリペリドン)、ゼプリオン(パリペリドンLAI)

 

 ⅱ)MARTA ・・セロクエル(クエチアピン)、ジプレキサ(オランザピン)、シクレスト(アセナピン)、クロザリル(クロザピン)、ビプレッソ(クエチアピン徐放剤)

 

 ⅲ)DSS  ・・エビリファイ(アリピプラゾール)、エビリファイ(アリピプラゾールLAI)

 

 ⅳ)DSA  ・・ロナセン(ブロナンセリン)

 

 ⅴ)SDAM  ・・レキサルティ(ブレクスピプラゾール)

 

 

②定型抗精神病薬 

 

歴史の古い薬。歴史に裏打ちされた効果も認めるため、状態に応じて使われることも多いです。

 

 

 ⅰ)ブチロフェノン系・・セレネース・リントン(ハロペリドール)、ハロマンス・ネオペリドール(ハロペリドールLAI)など

 

 ⅱ)フェノチアジン系・・コントミン(クロルプロマジン)、レボトミン(レボメプロマジン)など

 

 

 

 

2、抗うつ薬

 

 

脳内神経伝達物質(ノルアドレナリン、セロトニン)のシナプス前部への再取り込み阻害作用があります。主にうつ病・うつ状態に使用されますが、不安障害やパニック障害などに対しても使用されることもあります。

また、セロトニンの量が影響を与えているといわれている強迫性障害などにも一定の効果があり、使用される場合もあります。

 

 

 

①三環形抗うつ薬・・アナフラニール(クロミプラミン)、アモキサン(アモキサピン)など

 

②四環形抗うつ薬・・ルジオミール(マプロチリン)、テトラミド(ミアンセリン)など

 

③SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害剤)  ・・パキシル(パロキセチン)、デプロメール・ルボックス(フルボキサミン)、ジェイゾロフト(セルトラリン)、レクサプロ(エスシタロプラム)

 

④SNRI(セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害剤)  ・・トレドミン(ミルナシプラン)、サインバルタ(デュロキセチン)、イフェクサー(ベンラファキシン)

 

⑤NaSSA(ノルアドレナリン・セロトニン作動性抗うつ剤) ・・リフレックス・レメロン(ミルタザピン)

 

 

 

 

3、気分安定薬

 

 

主に双極性感情障害(躁うつ病)に使用されます。情動安定を図るためパーソナリティ障害や認知症の周辺症状などにも使用されることがあります。また、てんかんに対しても適応があり、使用されるものもあります。

 

 

 リーマス(炭酸リチウム)、デパケン(バルプロ酸)、テグレトール(カルバマゼピン)、ラミクタール(ラモトリギン)

 

 

 

 

4、抗不安薬(マイナー・トランキライザー)

 

 

世間でよく「安定剤」と言われているものがこれに当たります。主にベンゾジアゼピン系といわれる薬剤の分類に属します。

不安神経症に対し主に使用されますが、不安・焦燥・緊張状態の頓服などにも用いられます。

 

 

ベンゾジアゼピン系

デパス(エチゾラム)、ワイパックス(ロラゼパム)、リーゼ(クロチアゼパム)、セルシン(ジアゼパム)、ソラナックス・コンスタン(アルプラゾラム)、メイラックス(ロフラゼプ酸エチル)など

 

非ベンゾジアゼピン系

セディール(タンドスピロン)、アタラックス(ヒドロキシジン)など

 

 

 

 

5、睡眠導入剤

 

 

これも主にベンゾジアゼピン系といわれる分類に属するものが多いです。バルビツール系の薬剤も以前は使われていたようですが依存性、耐性が強く殆んど用いられません。

 

 

ベンゾジアゼピン系

ハルシオン(トリアゾラム)、レンドルミン(ブロチゾラム)、ベンザリン(ニトラゼパム)、サイレース・ロヒプノール(フルニトラゼパム)、ドラール(クアゼパム)、ダルメート(フルラゼパム)など

 

非ベンゾジアゼピン系

ロゼレム(ラメルテオン)、ベルソムラ(スボレキサント)、マイスリー(ゾルピデム)、アモバン(ゾピクロン)、ルネスタ(エスゾピクロン)など

 

 

 

 

6、発達障害関連

 

 

発達障害に関して、主に対症療法として薬物が使用されます。ただし、効果の出やすさ・出にくさは個人差が大きく内服するまではなかなか効果が予測できません。

 

 

オーラップ(ピモジド)、コンサータ(メチルフェニデート)、ストラテラ(アトモキセチン)、インチュニブ(グアンファシン)、ビバンセ(リスデキサンフェタミンメシル酸塩)など

 

 

 

7、認知症治療薬

 

 

認知機能低下の進行を抑制する目的で使用されます。メインはアルツハイマー型認知症に対してですが、一部レビー小体型認知症に対しても使用されます。

 

 

アリセプト(ドネペジル)、レミニール(ガランタミン)、イクセロンパッチ・リバスタッチパッチ(リバスチグミン)、メマリー(メマンチン)

これらの薬剤の特徴を十分理解し、個別の状態に応じて安全に配慮しながら適宜薬剤選択を行なっております。

​どうぞお気軽にご相談ください。

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